中国のドナルド・トランプとは誰か。
習近平政権を批判しつるし上げに…
その顛末と権力闘争の中身
中国専門ジャーナリスト福島香織が語る「チャイナリスク2017 衝撃の真実」
王岐山は習近平政権の反腐敗キャンペーンを指揮する〝中国汚職改め筆頭〞の〝鬼平〞であり、官僚・企業家たちから蛇蠍(だかつ)のごとく嫌われ恐れられている人物であるが、その王岐山が親友であるがため、任志強には怖いものがない。そのため、かなり言いたいことを率直に言い、〝中国のドナルド・トランプ〞のあだ名が付いている。
二〇一六年二月一九日。習近平が党総書記としてCCTV、人民日報、新華社を視察に訪れ「メディアの姓は党[メディアは党に忠誠を誓わねばならないとする標語]」キャンペーンを打ち出したとき、CCTVが習近平に忠誠を誓っていることをアピールするために、テレビ画面に大きく「CCTVの姓は党、絶対忠誠を誓います。どうぞ検閲してください」と卑屈な標語を掲げたことに対して、任志強は約三八〇〇万人のフォロワーがいるSNS微博(ウェイボー)上で「人民の政府はいつ党の政府になった?」と批判した。この発言の本質は、個人崇拝キャンペーンをメディアを通じて仕掛けている習近平自身に対する批判である。
習政権を批判した任志強はつるし上げに……
二月二二日、中国の大手メディアは習近平に忠誠を誓うことを示すため、「任志強は西側憲政民主の拡声器だ」「任志強は民衆の代弁者のふりをして、民衆の反党反政府の憤怒の情緒を煽動している」などとバッシングを開始した。これは、あたかも、文革のつるし上げの様相であった。